研究など(インタビュー)
ユニバーサルデザインに関する研究

車椅子使用者用便房における適切な便座高さの検証

研究名:

車椅子使用者用便房における適切な便座高さの検証(2019年12月受理)

研究機関:

日本レストルーム工業会

研究者: 新美浩二、長谷寛、木下直紀、杉山聡洋(日本レストルーム工業会 ユニバーサルデザイン部会)
 佐藤克志(日本女子大学 教授)

目的:

「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準(2016年度版)」の車椅子使用者用便房の規定では、大便器の便座高さは400~450㎜程度と示されているが、車椅子使用者の身体状況により、どの高さが適しているか解説はなく、根拠となる文献等も見当たらない。車椅子使用者用便房に設置する便座高さとして、一般大便器(420㎜)、高座面大便器(455㎜)のどちらが適しているか動作検証実験を行い、使用する車椅子を含め、車椅子使用者の身体状況ごとに適した便座高さを整理した。

方法:

便座高さが使い勝手に影響すると考えられる「公共トイレを1人で利用できる車椅子使用者(立位移乗者21名、座位移乗者24名)」と、参考として「介助付きの車椅子使用者(9名)」を対象に、BF 法ガイドラインに準拠した器具の仕様および配置、広さの検証装置を用いて、動作検証実験を行った。トイレ使用時の一連の流れを想定した①移乗(車椅子→大便器)、②排泄姿勢、③便座上での動作、④移乗(大便器→車椅子)の動作を再現してもらい、4段階の官能評価(○:問題なく使える、△:やや問題ありだが使える、▲:無理しないと使えない、×:使えない)を実施した。

結果:

官能評価結果を、検証協力者の移乗方法ごと(立位、座位、介助付き)に整理した。立位移乗者、座位移乗者(プッシュアップ)では、動作①~④で一般大便器と高座面大便器を「△および▲」と評価した人数に違いはあるものの「×」は一人もいなかったが、座位移乗者(スライド)では、一般大便器の動作④において「×」の評価が2名で、車椅子の座面と便座高さの差が大きい事が影響していた。
なお、参考の介助付き移乗者は9名全員が動作①~④で「△または▲」の評価」をつけたが、介助者が必要に応じてサポートするため、一般大便器、高座面大便器とも「×」の評価はいなかった。

結論:

検証協力者54 名のうち52 名は、一般大便器、高座面大便器のどちらの便座高さも使用できた。この人たちにとっては、身長(下腿長)および車椅子の座面高さの影響は小さいと推察される。ただし、上肢の筋力が低下し、かつ下肢に力が入らない座位移乗者(スライド)2 名は、使用する車椅子の座面高さと高低差が小さい高座面大便器でしか車椅子に戻ることができず、便座高さと車椅子の座面高さの差が重要であった。35 ㎜の違いではあるが、一般大便器、高座面大便器ともに必要であることが確認できた。

掲載:

日本建築学会技術報告集 第26巻 第62号,672-677,2020 年 2 月に掲載。
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