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貯湯式温水洗浄便座における残留塩素や微生物の挙動と微生物群集構造

研究名: 貯湯式温水洗浄便座における残留塩素や微生物の挙動と微生物群集構造
研究機関: 北里大学、慶應義塾大学
研究代表者 慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教授 大前 和幸
実施責任者 北里大学医療衛生学部講師 伊与 亨
研究関係者 東京大学大学院医学研究科公共健康医学専攻 助教 朝倉 敬子他
目的: 我が国での温水洗浄便座の世帯普及率は74.0%(2013年3月)に達しているが、温水洗浄便座の使用に際しての細菌学的な研究はほとんどなされていない。貯湯式温水洗浄便座の吐水の残留塩素や微生物指標の実態調査を行い、吐水の消毒状況と微生物学的な衛生状態に関する解明を試みた。
方法: 北里大学相模原キャンパスに設置されている貯湯式温水洗浄便座を調査対象として、2012〜2013年にかけて微生物学的な衛生状態の実態調査を実施した。調査対象の温水洗浄便座は、男性用43基、女性用71基、多目的用13基の合計127基。温水洗浄便座の吐水について、残留塩素や各種の微生物指標について実態調査を2回実施した。1回目の調査では、ノズルから噴出する吐水そのものについて分析を行うとともに、水道水を対照試料とした。2回目の調査では、ノズル表面を70%エタノールで消毒した後、滅菌精製水をかけた後、採水を行い、ノズル表面の汚れを除いた採水を行った。また、吐水や水道水に関する微生物群集構造解析もあわせて行なった。
結果: 温水洗浄便座の吐水の残留塩素の幾何平均値は0.04 mg/Lと水道水の平均値0.24 mg/Lと比べ低下しており、使用頻度に依存する。吐水の生菌数及び従属栄養細菌数はいずも水道水の値よりも高く、残留塩素のレベルと生菌数及び従属栄養細菌数の間には負の相関関係が存在した。糞便汚染指標細菌と緑膿菌に関する吐水の調査で大腸菌群が7例(5.5%)、大腸菌が3例(2.4%)、腸球菌が4例(3.1%)、大腸菌と腸球菌のいずれかが6例(4.7%)検出されたが1MPN/mL程度と少量であり、ノズルに糞便が付着し極めて少量ながら吐水に混入して、吐水から糞便汚染指標細菌が検出されたものと推察された。サルモネラ等の感染性微生物は吐水および水道水ともに検出されなかった。微生物群集構造解析の結果、水道水に微量に存在する環境系の微生物が、貯湯式温水洗浄便座の貯湯タンク内で生物膜を形成して増殖し、細菌として吐水に流出するものと考えられた。微量ながら吐水から緑膿菌が検出された。
結論: 貯湯タンクの加温による残留塩素濃度の低下や長時間の温水の滞留に伴い、貯湯タンク内の従属栄養細菌が増加し、ノズル表面、ノズル配管内及び貯湯タンク内での生物膜が繁殖した。吐水における生菌数、糞便汚染指標細菌、緑膿菌の検出頻度及び濃度は低く、衛生学的な安全は保たれていると推察された。ただし、吐水から緑膿菌が微量ながら検出されたことから、緑膿菌の由来、貯湯タンク内での挙動、長期間の生残性、多剤耐性などについて検討する必要がある。
掲載: 学術論文はJournal of Water and Health vol.14,No.1,Feb 2016;68-80 に掲載
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